イーロン・マスク、テスラ会長辞任でSECと和解




米証券取引等監視委員会(SEC)がテスラCEOで会長のイーロン・マスク氏を詐欺の疑いで提訴していた件で、SECはマスク氏が和解に応じたと発表しました。和解条件には、マスク氏に対し2000万ドルの罰金支払いと会長からの辞任、そしてテスラにも2000万ドルの罰金が含まれています。

マスク氏は、今後3年の間は再び会長に就くことはできません。会長としての権限を失うことで取締役会の招集や議題決定などの権限も失います。とはいえ、引き続きCEOおよび取締役としてテスラの舵取りは続ける見込みです。また、和解条件にはテスラが2人の取締役を迎え入れることも含まれているとのこと。

SECはマスク氏の振る舞いを関して「テスラのコーポレートガバナンスと外部からの監視を強化する」とコメントしました。

マスク氏は、SECの提訴に対して当初は争う姿勢を見せました。しかしそれでも、これほどまで速く和解に応じたことは意外でも何でもなかったと言えるでしょう。というのも、いくらマスク氏が自身のメンツをかけて争ったところで、もしSECが勝てばマスク氏は詐欺の有罪判決を受けるばかりかテスラから一切身を引かなければならなくなることが予想できました。それは生産能力向上に一時は工場に寝泊まりまでして取り組んでいたイーロン・マスクにとって、望む結果でないことは明らかです。

マスク氏がテスラを非公開化しようとした理由のひとつには、テスラ株を空売りし、株価下落を利用して儲けようとする人々を嫌ったことも含まれていたと考えられます。そのような株主にも今回の和解金が支払われるのであれば、それはなんとも皮肉な結果です。

テスラ、完全自動運転のベータテスターを社員から募集

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テスラは現在、(半)自動運転機能であるAutopilotを販売するEVに搭載しています。そしてその機能はそれで完成しているわけではなく、完全自動運転を実現すべく長く開発が続けられています。

Bloombergが入手した社内のメール文書によると、テスラは完全な自動運転機能の内部ベータテストを実施するため、従業員100~200人を募集しているとのこと。このテストでは5000~1万ドルで希望の仕様に応じたテスラ車を提供し、ドライバーは300~400時間程度の運転情報を会社にフィードバックします。

申し込みは先着順。メール文書の中でイーロン・マスクは、このメール送信の翌日正午にはすでに予約はいっぱいになると予想していると書かれています。

テスラは2016年当時、最新のAutopilotシステムはすべて完全自動運転機能を実現する能力を備えていると説明していました。そして、時が来ればそのスイッチをオンにできるとされました。その言葉を誤解したわけではないであろうものの、それ以降、Autopilotを過信したドライバーが大きな事故をいくつか起こしています。

イーロン・マスクはこの8月、TwitterでもAutopilotバージョン9で完全な自動運転機能を提供すると発表しています。ただ、これから社内ベータテスターを集めるとなると、一般のオーナーがそれを体験できるようになるのはまだしばらく先になる模様です。

NTHSA、世界の気温が2100年までに危険なレベルに上昇すると予測

Air pollution from vehicle exhaust pipe on road

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、この程発表した環境影響評価報告のドラフト中で「世界の気温上昇は2100年までに、工業化前と比較して約4℃上昇し壊滅的な影響をおよぼすことになる」と報告しました。すわ、NTHSAがトランプ政権に反旗を翻したか...と思いきやその報告は「もはや温暖化は急激に進行しており、自動車への規制をしたところで無意味、なので規制は凍結する」と続けられています。

思い切り腰砕けな内容のこの報告がトランプ政権の意向を最大限にくんだものであることは説明するまでもないものの、まるで冗談のような報告内容には開いた口が塞がりません。

MITのジョン・スターマン氏は、この報告の問題は政権がさくらんぼを選んで収穫するように統計の都合のいいところばかりを抜き出して、まるで対策に効果がないかのように記しているところだとワシントンポストに指摘しています。要するに現政権が弱体化させている環境施策を「もし何もしなかった場合」とばかり比較してその効果を矮小化しており、オバマ時代に推進した、高度な環境対策の成果を見えにくくしているということです。

そしてトランプ政権は自動車だけでも80億トンものCO2を放出しており、それを米国だけで改善していくのは不可能と説明します。ただそれは、科学的分析の結果と言うよりは宿命論的説明というほかありません。地球温暖化がすでにかなり進行していることは、極地域の氷河の溶解やサンゴ礁の死滅を見ても明らかです。そして、温暖化は干ばつや局地的大雨、巨大ハリケーンなどによる被害の甚大化といった状況を加速します。

まだ救いがあると思えるのは、こうした政権の方針に自動車メーカーが甘えることなく、むしろ以前の温暖化対策に沿った開発を(まだ)継続しているところかもしれません。主要な自動車メーカーはいずれも2020年ごろからEV、ハイブリッドカーを相次いで投入していくことを発表しています。また自動運転による輸送機関やライドシェアの浸透は、自動車所有率を引き下げ、CO2排出を改善する一助になるかもしれません。もちろん、これは自動車メーカーだけでなく、あらゆる人々が冷静に気候変動を考えているからこその変化と言えるかもしれません。

古い車にLTE通信やGPS機能を追加するドングル

AT&Tが1996年以降の自動車の多くに搭載される外部接続コネクタOBD-IIに接続し、LTE通信によるインターネット接続やGPSによる位置情報受信、それらを組み合わせたセキュリティ機能を提供するドングル型デバイスを発表しました。

このドングルによって、たとえば車が盗難にあったりした際にもその居場所をすばやく把握できたり、GPS情報に基づいて設定した(たとえば極端に治安の悪い)区域に近づくと進入禁止の警告を発することも可能です。

このドングルは80ドルで販売され、月額5ドルのLTEの通信費用で使用できます。ただし、車内WiFi機能を付加する場合は、モバイルデータプランなど他のサービスを組み合わせる必要があるとのこと。いまや自動車がビルトインのAIアシスタントを搭載し、音声で通販サイトから買い物ができたりする時代ではあるものの、旧車の魅力がわかるエンスージアスト諸氏には、このドングルは非常に便利なツールになるかもしれません。

VWとマイクロソフト、自動車向けクラウドサービスを提供へ


ディーゼル偽装による痛手を過去のものとすべくEVやスマートカー戦略に全力を注ぐフォルクスワーゲン(VW)は、自動車向けOSの開発に加えて、共通のインターネットサービスの提供も望んでいます。そのためVWはマイクロソフトと手を組みVolkswagen Automotive Cloudと称するサービスを開始すると発表しました。

このサービスの正確な全容は明らかにされていませんが、たとえばドライバーが車に乗り込むと好みに応じた音楽が自動で再生されたり、通勤の時間を利用して電話会議をしたりといったことが可能になるとのこと。

Automotive CloudはMicrosoft AzureプラットフォームでIoT EdgeとPowerBIなど組み合わせて動作し、Skypeのような機能を車内にもたらします。マイクロソフトは本社を構えるレドモンドで自動車サービス向けの子会社を設立し、VWとの関係を強化しています。

このクラウドサービスがいつ頃提供開始されるのかもまだ明らかにはされていませんが、予想されるのはVWが最初に車載OSを搭載するEV、I.D.が発売される2020年ごろと予想できます。いつになるにせよ、個人が自動車を所有・運転する時代がライドシェア、配車サービス主流に変化するなか、車載テクノロジーを根本的に変えようとしていることは間違いなさそうです。